2026/03/07 07:30

本屋のPOPUPを開きました。やわらかくて、透き通った色が交わる空間でした。
来てくれたみなさんの日々が、新しくオープンするkoru; の日々が、いつもあたたかいBar Soutsuの日々が、まるでも しかくでも さんかくでも、好きな形、好きないろになることを願っています。

というか、もともと自分には幸福や不幸について考える習慣がない。わたしは風とそう変わらないんだ。濡れているもあれば乾いている日もある。しょっぱい日もあれば甘ったるい日もあった。消毒液の匂いの日やパンの匂いの日だって。喧騒に身を浸していた日も、心臓の音ばかりを聞いていた日も。緑色の日。茜色の日。いろんな日が過ぎ去ったけれど、いつだって同じように自分だった。
(小津夜景『ロゴスと巻貝』)


いくつかの写真をどうぞ。






ちょっと商売っぽいか…? と思いながらも宣伝も。

ふだんは、日々を生きるおともとして、季節ごとに1年間本をお届けしていますが、せっかくのご縁を…と思い、1回きり本をお届けできる商品を用意しました。(Bar Soutsu限定と書いていますが、それ以外でも、お尋ねいただけたら秘密の番号をお伝えしてしまおうと思います。)

①カレンダーの本たち
カレンダーで紹介した本たちが10冊届きます。

▼カレンダーの言葉
3月:Q.ノヴァヤ・ゼムリャにいる熊は何色か?A.見ないと分からない
7月:ショートケーキが人生を変えると思ったらそうだし、クロワッサンだと思ったらクロワッサン
9月:降水確率が90%の日に傘を持たずに家を出たい

②1万円選書
エッセイ、人文書、詩歌、ときどき小説。
新刊本を4~7冊選んでお届けします。


Bar SoutsuでのPOPUPのテーマ「ひとやすみ」をお届けできるような本たちを選んでいます。
誰かのお休みのおともができますように。


◇◇◇


ここからはいつものとおり。今週の日記をどうぞ。


2026年2月28日(土)

「こんにちは」から始まる連絡があって嬉しくなった。そんなに疲れていないし、お世話もしていないから、距離の近い人たちは「こんにちは」「おはよう」からメッセージを始めてもらいたい。それでいうと、職場の帰りの挨拶は「お先に失礼します」ではなく、「早く帰っておいしいごはん食べましょう」とかにしたい。

さて、出張1日目。空港にある中華料理屋にまた入ってしまった。以前、店前のATMを使おうと立っていると、「1人? 何にする?」と声をかけられた、あのお店。今回も「1人? この席、まず座って」と中に通される。後ろでは、「ごめんなさいね、時間かかっちゃってね」「ありがとうございました、おいしかったです」という会話がなされていて、おいしい を伝えたくなるのわかるな、と思う。


2026年3月1日(日)

好きな先輩の結婚式。先輩(新郎)が、新婦が中座するときの写真を撮っていて、かわいかった。「後ろから撮っているカメラマンがいなかったから」と、言い訳のようにつぶやいていたのもかわいい。最後の挨拶で、新婦の好きなところを話していたのもやっぱりかわいくて、お祝いに来てよかった、と思った。


2026年3月2日(月)

観光の仕事で、メディアの編集者の方たちとお話しする。すてきな人の紹介として、「文化(≒あるもの)をこちら(≒自分、自分の商品)に寄せない(からいい)」と言っていたのが心に残っている。観光PRも、本屋も、何かを生み出す仕事ではなく、再編集するものだと思っているので、この姿勢を大切に心に留めておきたい。


2026年3月3日(火)

雨。駅直結が多い町に来たので、濡れずに移動できていい。東京の人たちは通勤で雨に打たれることがないのか…と、うらやましくなる。同時に、島での帰り道は雨に打たれてもいいと思っており、どうだ!うらやましいだろう!とつぶやく。誰に向けてなのかわからないけれど。

そういえば、この日のメモ帳には、「移住者はモルックをやらないといけない」とありました。なぜかはわかりません。


2026年3月4日(水)

明日はいよいよPOPUP。明日が僕の人生において、間違いなく重要な日になると確信していてーー。というより、勝手に大きな存在にしてしまっていて、楽しみとプレッシャーでごちゃまぜになっている。お花がかわいかったらいいな、本はこの上なく大切に選んだし、コーヒーを淹れてくれる人もお酒をつくってくれる人も絶対にすてきだから。


2026年3月5日(木)

よかった。いい時間だった。

(お礼とか感想は別途どこかに書くとして、ここには日記を)
あまりに好きだと人は不安になるらしい。東京にいるときに心の拠り所だった大切なバーで、とてもすてきだと思っている人をコーヒー屋さんとして招いてのPOPUP。自分のことは誰よりも好きだし(それってどうなの? と思われるかもですが、いいことだと思っています)、今日を楽しみにしてくれている人がいるのも知っていた。それでも、この2人の横が自分でいいのか…と何度も思った。勢いで企画してしまった、悪い癖が出てしまった、と。

結果、大丈夫だ、と思えた。自分だけでは当然つくれない場所だったし、他2人もそうだったんじゃないかな、と勝手ながら思っている。片付けをしているとき、きれいな涙を見た。ホテルに帰って、たくさん泣いた。あたたかくて、やわらかくて、ちゃんと強い場所になったんじゃないかな? いつもどおりの唐突な誘いに乗ってくれた小野寺さん、ゆいなさん、平日の真ん中に時間をとってくれた、そしてすてきな空間を一緒につくってくれたみなさん、本当にありがとうございました。今日のおかげで、これから数十年楽しく生きられる予感がしています。

誰かにとっての平凡な1日をつくれる気がした、僕にとって大きな1日。29:32、無事におしまい。


2026年3月6日(金)

「晴れたから、違うオレンジに乗り込んで熱海なんかに行ってしまおう」

POPUPで岡野大嗣さんの『音楽』に添えた、いつかの僕の歌。きちんと予定していたものだけれど、気持ちの上ではまさにそんな日だった。東海道線に乗り込み、住宅地が海に変わりゆくのをぼんやりと眺める。降り立ったのは真鶴駅。念願だった、泊まれる出版社・真鶴出版へ。久しぶりのひとり時間だった。

夜、寒い町に1人で出た。昼間に宿のお姉さんに案内してもらった道歩く。いつもより空気が冷たくて、星がきれいだった。「コーヒー屋さんにいるのでよかったら寄ってくださいね」と言われていたので、お店をのぞいてみる。お姉さんはそこにいて、店員さんからお米を受け取っているところだった。店内には、焙煎機と本棚、石とカメがある/いる。「果琲」「海と森のブレンド」のドリップバックを購入。思いつきで「このジャケット? で選書してもいいですか」と聞いて了承をもらう。勢いばかりの悪い癖。果たして選べるのだろうか…。まずはのんびり淹れてみましょうか。

コーヒー屋を後にして、マダムが1人で営む居酒屋へ。宿にいたお二人に「きっと似合う」と言われたので、勇気を出して扉を開ける。なんと、贅沢にも貸切だった。いつもは選ばない瓶ビールを手に、いつもは話さないあれこれを。今何をしていてそれはなぜなのか、今後誰といてどんなことをしたいのか。素直に口が動いた。これがひとり旅のいいところ。マダムと一緒にテレビを見ながら「300円までなら出せるなぁ」なんて言い合う時間もよかった。

いい金曜日だ。まち歩きの途中でお姉さんが別のマダムから靴下をもらっていたのも、帰り際にコーヒー屋さんに石を託せたのも、どれもよかった。もちろん本も連れ帰りました。いい本です。


◇◇◇


今週もすてきな日々になりますように。(2026.03.07)


[紹介した本など]
小津夜景『ロゴスと巻貝』(アノニマ・スタジオ、2023年)
岡野大嗣『音楽』(ナナロク社、2021年)
のもとしゅうへい『海のまちに暮らす』(真鶴出版、2025年)
勝山千帆『風が生まれるところ』(真鶴出版、2021年)

[写真]
2026年3月5日。POPUPにて、カレンダーの一角