2026/03/21 07:30

塚本香さん(昨年隠岐に来てくださった編集者・ライター)がストーリーズに阿部千登勢さんのインタビュー記事を載せていた。学生時代、ドメスティックブランドの世界に片足の小指くらいを突っ込んでいた記憶もよみがえり、僕はリンクをクリックしていた。


学芸大学駅から15分くらいの工場跡にオフィスを構えてスタートした頃は、こんなふうにブランドを発展させようなんて思ってもいませんでしたが、小さいブランドでもほかにはないものを作りたいという意識は持っていました。「これだ」というサカイらしさが見えてきたのは3シーズン目から。もともと私はカーゴパンツやシンプルなカーディガンやジャケットが大好きで、その類いのベーシックな服ばかりを自分なりにサイズを変えたりバランスを崩して着ていたのですが、同じ発想で、すごく普通なのに普通ではないものを作ればいいんだと気づきました。自分が欲しいのは普通のもの、ただしそれは誰も見たことのない普通のものなんだ、と。その後最初に作ったのが、メンズのカーディガンにテイラードの襟をつけたカシュクール。メンズとレディス、カーディガンとジャケットがひとつになったハイブリッドで、フェミニンでありながらベーシック。そこを出発点に26年間やり続けています。リボンやフリル、ファスナーがつくこともあるけれど、そこには必ず意味が必要で、それを突きつめていくようにしたら、デザインすることが苦しくなくなり、ますます楽しくなっていった。そのカシュクールは今やサカイのクラシックになっていますが、そうした初期のアイテムも最新コレクションのルックも根底は一緒です。
(VOGUE JAPAN「阿部千登勢が振り返るサカイの26年間。「私自身が着たいと思うかが、 サカイの大事な判断基準です」【女性デザイナーの現在 vol.1】」)


なんと強く、かっこいい言葉なのだろうか。未来の僕は、「そこを出発点に26年間やり続けています」と言えるだろうか。言いたいな、と思う。本屋であるかはわからない。だけど、何かしらやっているんじゃないかな。きっとそれはバーテンダーの素振りをしていたあの日から変わらない。

ちょうど先週の日記に「「なんとなく」がたくさん集まって、「それらしく」なっていったらいいのかもしれませんね。もしかしたら、ろ過されて、美しい色が現れるかもしれませんね」と書いていた。同じ土台で語るなんて烏滸がましいけれど、今苦しみながら楽しんでいたら「これだ」という「らしさ」が見えてくるかもしれない、3年後くらいに。基本的にはのほほんと生きている僕だけれど、もうちょっとだけ苦しんでみてもいいかもしれない、と思う。

と言いつつ、ふわふわ漂っている今週の日記をどうぞ。


2026年3月14日(土)

出勤日。仕事終わりにタコスを食べに行く。食事とともにビールを楽しむ。バーに行く。ジントニックを飲む。島暮らしにもこんな日があっていい。いろんな暮らしを楽しみたい。いろんな暮らしって何かわからないけれど。


2026年3月15日(日)

家を見に行った。港から35分。島の真ん中を通る道でも、島の西側を通る道でも、どちらも等しく35分。端っこではないのだけれど、アクセスを考えると端っこと言っていい集落。いいと思うなぁ。幸せに暮らせたらそれでいいと思っているので(それを「多くを望んでいる」と言うのかもしれないが)、夕日が見れて、海がそこにあって、空が広くて、鳥が飛んでいる、そんなここがぴったりだ、と思った。


2026年3月16日(月)

隠岐で初めてのPOPUP。隠岐で初めてのお客様は高校生。彼にとって初めて買う本だったらしい。なんと光栄なことだろうか。価値観の押し付けかもしれないが、少なくとも僕にとっては、本は景色を変えてくれるものだった。彼にとっても、通学路がただのアスファルトでなく、石が石でなくなったらーー、それによって気分が上がることがあったらいいな、と願う。

2度目のPOPUPを終えて気付いたのは、好きな本ほど早く手に取ってもらえるということ。説明文から好きが漏れ出ているのでしょうか。反対に、これは誰か好きなんじゃないかな、自分もまぁ好きだし…くらいの気持ちの本は残った。らしくない忖度はいらなかったか。これからは一層好き勝手にやっていきます。


2026年3月17日(火)

ありがたいことに、文字を書くお仕事をいただく(文字どおり、ペンで書く仕事)。あの…嬉しいんですけど、重大な任務すぎやしませんか。こちとらただの青年ですよ。ああ、なんなら、そろそろ青年と呼ばれる時期も終わりそうですよ。頭はぐだぐだとうるさい。

「お店の名前を書いてほしい」とのオーダー。

うきくさ堂の文字は、take50くらいまで行ったんじゃないかな。名前の大切さはわかっているつもりなので恐れ多いが、自分の字を、字の可能性を感じてくれたことを素直に受け止め、感謝して、応えられるように努めたい。1週間後にはきっとゲシュタルト崩壊。それでいい。


2026年3月18日(水)

会食っていう会食は人生で初めてだったんじゃないかな。こっちがホスト、あちらがゲスト。(仕事なので反省は多いのだけれど)ゲストの社長さんが理想の大人でよい時間だった。穏やかで、信頼されていて、喜ばせるのが上手。肩の力は抜けているのに。すごいなと思う方との出会いは他にも多かったが、「あぁなるほどなあ」という不思議な感覚になったのは、松江のコーヒー屋さん以来久しぶり。なぜか最後に「ユウトさんのやることは全部応援しているよ」と言われ、ハグをした。がんばってみます。ありがとうございました。


2026年3月19日(木)

帰ってまず寝る。18:00~21:00。怒涛の3月前半の終わり。ここからは穏やかに、穏やかに。


2026年3月20日(金)

「走ろう」と言われて、「いいよ」と返事したら、ランニングをすることになりました。いつの間にか、「走ろう」と言われたらドライブだと思う人になっていました。それはそうと、走ったのは実質3kmくらい。残りの9kmは歩きました。残りの9kmって意味がわからないでしょ。自分でもそう思います。トータル12km。ウルトラマラソン(50km)に向けていいスタートです。


早くも2026年の4分の1が終わりそうでびっくりですね。
ともあれ、来週も愛おしい日々になりますように。(2026.03.21)


[関連する本など]
VOGUE JAPAN「阿部千登勢が振り返るサカイの26年間。「私自身が着たいと思うかが、 サカイの大事な判断基準です」【女性デザイナーの現在 vol.1】」(2026年3月2日)
村田あやこ『緑をみる人』(雷鳥社、2025年)
矢作ちはる『石の辞典』(雷鳥社、2019年)

[写真]
2026年2月20日。石、隠岐にて。